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  征くはドラゴンへの道…

題目:イー・アル・カンフー
                    
■メーカー:コナミ
■メディア:FC
■ジャンル:アクション
■発売年 :1985年




 当時は知らなかったけれど、「イー」「アル」とはあちらの言葉で「1」「2」。即ち『1、2の
算数』みたいなノリで付けられたタイトルだったってわけね…。











あっちもこっちもいい仕事

 オリジナルは、1985年発売のアーケードゲー
ム。プレイヤーと相手キャラとの一対一の対戦
もので、11人の敵――つまり11種類の格闘技と
の闘いを繰り広げることとなる。
 着目すべきは、単なる「アクションゲーム」
に止まらず、既に「格闘」という要素を色濃く
打ち出していた所であろう。レバーとボタンの
組み合わせによって多彩な技を駆使でき、おか
げでマイキャラとのシンクロ(なりきり)感は
なかなかのものであった。
 後の『ストU』より遥か以前にそれらを実現
していたことに、今更ながら感服^^(『飛龍の
拳』も然り)。


アーケード版1面より。対する敵は「ブッチュー」。
FC版ではこいつがトリ(締め)の相手に…。



そしてFC版1面。まるで人形劇みたいだけれど、
外見で侮るなかれ! 実は羊の皮を被った虎^^
 その対戦格闘の始祖とも言えるアーケード版と
タイトルを同じくするのが、FC版たる本作。一
対一の対戦格闘というスタイルは共通しているも
のの、アーケード版とは見た目からしてまるっき
り別のゲームとなっている。恐らくは容量とハー
ド性能の格差からであろうが、繰り出せる技や対
戦相手の数もオリジナルよりは遥かに少ない。
 が、だからといって「ゲーセン版の廉価版」と
か「無理のある移植」といったありがちな悪印象
は全く無い。数行前で書いた通り、このFC版は
「アーケード版とタイトルを同じくするまるっき
り別のゲーム」。そうして、これはこれで大成功
を収めたという稀有な例なのである。












素朴に熱いぞ!

 プレイヤーは主人公のリーとなり、悪名高いチャーハン一族を討つべく闘いを繰り広げてゆく
こととなる。舞台となる「メンマの塔」は全5層。1階から順に闘い抜いてゆき、最上階の首領
を目指してゆく――主人公の名前や闘いの舞台からして、名作『死亡遊戯』のまんまやの〜。後
の『KOF』然り、当時の流行やスタッフの趣向が如実に反映されるのはゲームの宿命か…。


 全5層というだけに、各階
に1人ずつ――計5人の対戦
相手が駐留。それぞれ異なっ
た格闘スタイルをもってリー
を迎え撃つ。それらがまた個
性的かつリアルで、よそのゲ
ームみたいな単なるボコボコ
バトルとの格の違いを見せ付
けてくれる。棒術や手裏剣の
様な現実的なものから、人体
飛行といった特撮チックなも
のまであり…と、クセのある
面子が粒揃いである。


一番手・棒術使いのワン。だが棒術のみならず、
蹴り技なども駆使する技巧派。油断するな!
 かつ、その1人1人の技や
動作も深く掘り下げられてい
て、動きの活き活き感は元よ
り人間的な生々しささえ感じ
させられてしまうくらい。当
時、敵キャラをこれだけ魅力
的に描いたゲームなんて他に
例は無かったよなあ。「一対
多数」より「一対一」の方が
キャラに焦点を絞り易いが故
であろうか? そのせいか、
何気に4番手の手裏剣使い・
ラン嬢は好きなのだが。



 敵陣営がそれ程の個性を誇る一方、もちろん主人公たるリーだって負けてはいない。
その動作パターンたるや、当時のゲームキャラ中でも群を抜いた多彩さであった。


「左右移動」「ジャンプ」「しゃがみ」「パンチ」「キック」――これらの事象によ
り織り成される技の数々たるや、まさしくゲーム版『燃えよドラゴン』!! 単純にワ
ンキープッシュで出せるものを基本に、それらの複合によって更に多くの動作を引き
出せるというわけである。
 例えば、キック(B)ボタンひとつ例にとっても

火吹き術の使い手・タオ。接近戦といきたいが、
巨体からの打撃技も強烈。スピードで翻弄せよ!

○キックのみ…………………
    
   「ローキック(立ち下段攻撃)

○レバー左右+キック………
    
   「ハイキック(立ち上段攻撃)

○ジャンプ+キック…………
  
   「跳び蹴り(垂直ジャンプ上段攻撃)

○斜めジャンプ+キック……
 
   「横跳び蹴り(移動ジャンプ上段攻撃)

○しゃがみ+キック…………
   
     「足払い(しゃがみ下段攻撃)


 …などという具合に、個々の操作の組み合
わせによる攻撃のバリエーションはまさに百
花繚乱!(誇大表示) そのシステムは後の
『ストU』のルーツと言っても差し支え無い
と個人的に思う。だって、本作に「コマンド
必殺技」「投げ」「ガード」「間合いによる
技の変化」を追加すれば『ストU』になっち
ゃうもの^^ そうした要素抜きで、純粋に基
本的な動作だけでこれだけ魅せてくれる本作
はやはり偉大である。同時に、人間の動きこ
そが最も多彩で面白いということをも実感さ
れられるよなあ。


 しかも、プレイに慣れてゆく内にそれらの
アクションを、状況に応じて咄嗟に繰り出せ
る様になってくるからまたすごい。頭でアレ
コレ考えるのを跳び越して、敵の動作を見て
反射的に技を出せる様になってくるというこ
と。それこそ、最初は闇雲に横跳び蹴りばか
り連発していたのに、いつの間にか接近戦で
相手を圧倒できる様になっていたという具合
に。この頃にはもう、プレイヤー自身が無意
識の内にリーになりきって闘っているはずで
ある。後はグラフィックをもう少し強化でき
れば、まさに『燃えよドラゴン』気分でゲー
ムにのめり込める?

恐らく最強の敵・鎖使いのチェン。
伸縮自在の鎖ムチの応酬を、果たして見切れるか?



ちょっとひと息(!?)入れてボーナスステージ。
反射神経と咄嗟の技の判断力が試される…!
 この事象は、アクションゲームに
おいて理想形と言える。全ての技を
駆使しなくても遊べるが、技を使い
こなせれば更に奥の深いゲームプレ
イを楽しめる。そして、操作に慣れ
るに従ってゲームへの没入度も深く
なってゆく…。恐らく『イー・アル
・カンフー』はその傾向においてト
ップクラスのはず。
 普通のパンチやキックといった、
ごく現実的な動作だけで構成されて
いるのも大きな要因であろう。その
様な地に足の着いた動作の方が、結
局はプレイにおけるシンクロ率も高
いのである。その流れを今に受け継
いでいると言えるのが、やはり『バ
ーチャファイター』ではないかと思
う。逆に『ストU』系の2D格闘群
は、必殺技等の演出でどんどんドラ
ゴンボール化(SFチック)してい
って、観ている分には楽しいけれど
シンクロ感は薄れる一方…。



 改めてプレイして感じたが、
この頃はまだ「防御」の概念が
無かった(初導入したのは恐ら
く『飛龍の拳』)。「攻撃」そ
して「回避」のみが占めるバト
ルであったわけである。即ち、
相手の技を受けつつ対処…とい
った落ち着いた闘い方はできな
いわけ。従って、全神経を尖ら
せて攻撃を避け、隙あらば技を
叩き込むという常時全力疾走プ
レイが基本。そんな息つく余裕
も無いくらい切羽詰った戦闘だ
けに、プレイする側も自ずと死


敵陣営の紅一点・ラン嬢。ゲーム界における
『闘う乙女』の開祖は彼女なのでは!?
にもの狂いになってしまう。こ
れもまた没入度の深さの要因じ
ゃないかねえ。
 そう考えると、『ストU』以
降の格ゲーは、どんなに激しい
戦闘でも「防御」ができる分だ
け余裕があるわけである。それ
に比べたら、殺られる前に殺る
しかない『イー・アル・カンフ
ー』のバトルは本当にシビアで
あった。「攻撃は最大の防御」
を地で言っているスタイルって
ちょっとカッコイイかも知れな
いなあ…。











名作、時代を超える!(映画もゲームも)

 本文を書くために約23年ぶりにプレイしたんだけれど、いや〜熱い熱い。現在の格ゲーに
勝るとも劣らないくらいの没入度である。発売当時よりも遥かに面白く感じられるのは、そ
の後の格ゲーブームを見てきたからこそであろうか?


 一対一の対戦格闘系としては、まさにシンプルイ
ズベストと呼ぶべき仕上がりと思う。ハード性能や
時代背景もあろうが、ゲーム性に無関係な演出やプ
レイを大味にしかねない一発逆転技等は一切無し!
必要最低限のパターンだけで、ここまで本格的な格
闘アクションを織り成したコナミは偉大である。ゴ
テゴテ手を加えて自分達の好みカラーに染めてしま
うフランス料理とかと違って、素材そのものの味わ
いを最大限に引き出す日本料理みたいで実に好感が
持てるなあ。
 必殺技や連続コンボの応酬になりがちな昨今の格
ゲーは、クリエイター・ユーザーともに本作に触れ
て「基本」の大切さを見直してもらいたいと思う。

最後に待ち受けるは、飛行術の使い手・ウー。
ゲーセン版より不敵で貫禄があるのはなぜ!?



ハイキックを避けつつ、下段パンチ一閃!
しかし、女のランへの効果の程は…(死)。
 上の方でも少し書いたが、当時はカンフー映画が大流行
であった。国内はもちろん、ハリウッドまでも!
『燃えよドラゴン』『五福星』『ドランクモンキー酔拳』
『少林寺三十六房』『プロジェクトA』等々、この時期に
制作された作品を挙げればキリが無いくらい。故ブルース
・リーやジャッキー・チェンを始め、この道のスター達の
尽力の賜物だよなあ。今観直しても、彼らの文字通り体を
張った演技には本当に感服つかまつる想い。だって、危険
なシーンの撮影もスタントや命綱無しで臨むし、目玉の格
闘シーンも寸止めじゃなくて本当に打撃を加えているって
んだから。「
迫真の演技」じゃなく「の演技」だからこ
そ、伝わってくる迫力や気合が桁違いなんだよねえ。それ
で飯を食っている人達の気概と誇りに、あらためて敬服!



 現在はどんな危険なシーンもコ
ンピュータグラフィックスでチョ
チョイのチョイだけれど、それが
解っているが故に「痛み」「必死
さ」とかいう要素が薄らいで見え
てしまうのも確か。特撮及びCG
でなければ実写表現不可な部分は
しょうがないとして、人間自身の
力だけで撮れるシーンはなるべく
そうしてもらいたいと思う。そう
して体を張って作ったものはちゃ
んとユーザーに伝わるということ
は、カンフー映画の数々が実証し
てくれているから…。


見事、ウーを打倒! 勝利のドラを鳴らすリー。
物語は幕を下ろすが、プレイヤーの挑戦は続く…。


 そんなカンフー映画全盛期の生き証人とも言える『イー・アル・カンフー』、格ゲー好きなら
押さえておくべき一作であろう。とび道具とか待ちプレイ(溜め系キャラ)みたいな小細工の無
い分、純粋に「力量」が試される作品と言えよう。その身ひとつで闘いに臨み、あなたはどこま
で勝ち進められるであろうか?


(C)KONAMI 1985

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