MEMORIAL GAMESに戻る

 夢のバクダン 打ち上げろ♪

題目:かんしゃく玉なげカン太郎の
  東海道五十三次

                     
■メーカー:サンソフト
■メディア:FC
■ジャンル:アクション
■発売年 :1986年



 個人的に、サンソフトの作品中で最も好きな一本である。イカスのよね〜、アクションゲームとしても、
70〜80年代アニメ的なノリとしても…。











サンソフト時代劇アワー

 時は幕末。花火職人カン太郎は、独自の花火製
法の確立により遂に免許皆伝を得る。その名誉と
新作花火を土産に、郷里の江戸を目指して京都を
発った。その帰りを待っていてくれる、許婚のも
もこちゃんへの想いを胸に…。
 一方、それに目を付けたのが、幕末の動乱期に
便乗して大儲けを企む豪商・伊ノ国屋剛左衛門。
カン太郎の編み出した花火の製法を鉄砲製造に応
用しようと目論み、その道中に次々と刺客を差し
向ける――。

遥かな江戸へ向け、いざ東海道を巡る旅路に!
帰りを待つ人のために…。

出発にあたり、勢い付けの花火上げ!
帰路、そして逃避行の火蓋が切って落とされた―。


 ――というのがバックストーリー。解り易く言うと、『忍たま乱太郎』みたいなああいうノリ? い
や〜、本作も是非アニメ化が望まれるねえ。五十三次だから全53話。一年間4クール分でちょうどキリ
もいいし^^











けっこうクセあるACG

 タイトルにもなっている様に、カン太郎の武器は「かんしゃく玉」。いわゆる爆弾なわけ
である。幕末の慌ただしい時期に爆弾をバラ撒きながら東海道を爆走!?――という当たり前
のツッコミは置いといて、このかんしゃく玉というものがなかなかに面白いのである。

満天の星空に、燦然と輝く太陽!?
嘘。かんしゃく玉の爆発した瞬間でした^^

追手の忍者・黒丸に、洗礼のかんしゃく玉炸裂!
邪魔する奴らは容赦無く吹っとばせ!


 かんしゃく玉は投げ付ける
際に、真っ直ぐでなく放物線
を描いて跳ぶ。斜め上30度く
らいの角度で、緩やかなアー
チを描いて――ただこれだけ
のことで、発射のタイミング
や爆破地点の計算にかなり頭
を巡らせる!
 落ちてくる敵をギリギリま
で引き付けてショット、あの
ポイントならこのくらいの高
さまでジャンプして投げ…等
々、パターンは様々。他のゲ
ームの跳び道具が大抵直線跳
びで、ただ無意識に正面の敵
目掛けてバシバシ撃つだけな
のとは一線を画していると言
えよう。
 他、足元に仕掛ければ時限
爆弾(約2秒で爆発)にもな
る等、活かし方も色々。プレ
イに慣れてくると、状況を瞬
時に見極めてそれらを使いこ
なせる様になってくる。これ
が非常に楽しい! プレイヤ
ーキャラとのシンクロ感って
重要よ、ACGにとって。

放物線が仇となり、低い位置の敵には
当てにくいことも…。特性と地形を見極めよ!


 キャラ自体の操作にもややクセがあって、「慣性」というものがわずかに働いている。歩き
始めがちょっと遅かったり、急に方向転換すると若干滑ってしまう等。これが結構プレイに絡
んできて、扱い方になかなか神経を使う。誤れば死、活かせればテクニックという感じで。



静止画だと判らないが、振り向き様に投げた瞬間。
直後、通常の2/3くらいの距離を跳んで敵に命中。
 これをかんしゃく玉投げに応用すれば、より
バリエーションに富んだ戦法がとれる。走りな
がら投げれば遠くに届くし、振り向き様ならや
や近くに落ちる…と言った具合に。これらを活
用、もといモノにしなければ、狡猾極まりない
剛左衛門一家には到底太刀打ちできまい。上の
写真のコメントでも書いたが、己の特性を見極
め、活かすことが重要というわけである。
 にしても、サブ画面とかややこしいコマンド
も導入せず、よくここまでアクションに拡がり
をもたらしたもんだよなあ。たった4方向+2
ボタンなのに。ヤケクソ気味に操作を複雑化さ
せまくっている今のゲーム業界に見習わせたい
ものである。











「動」は口程にものを言う

 さて、ゲーム自体の出来もさることながら、本作には大きく魅せられる点がある。
それはキャラクター達の生命感。コミカルタッチで親しみがあるのも然りだが、何と
言うか、まるで本当に生きているかの様に立ち回ってくれるのである。


 カン太郎にしても敵軍団にしても、キャラ
達は本当に感情表現豊か。移動や攻撃はもち
ろん、やられパターンに至るまで実に個性的
である。そのアクションに、非常に人間らし
さ――もとい人間臭さを匂わされてしまう。
 仕事人・シゲのやられパターンが「シェー
!」だったり(その直後バッタリ)、関所役
人の中山主水の「怒り」が妙に生々しかった
りと、挙げればキリが無いくらい。それらの
アクション、と言うか生きっぷりが見ていて
すごい楽しいのよね〜。まるで、冒頭で例え
たみたいに『忍たま乱太郎』でも観ているか
の様なノリで^^

仕事人・シゲが頭上より急襲!
幽霊のお石の追撃との二重奏に、どう立ち向かう?


 時代が時代だけに、ゲームのキャラは大抵の場合無機質な感じしか受けなかった。そんな中、本作のキャラ
達はまさにゲーム世界で息づく住人! 絵本みたいなテイストとコミカル感がそうさせるのかねぇ。



川辺に寄ると、自動的に金を払って足場出現。
今の時代ならきっとコマンド選択や数値入力に…。
 アクションゲームってのは
その名の通り、キャラクター
の「動き」に重きを置いたジ
ャンル。よって、画面内の情
報・事象がパッと見で理解で
きなければならない。当然、
文字情報は極力少なめが望ま
しいし(せいぜいスコアと残
機表示くらいか)、カーソル
で選択肢を選ぶなんてのも避
けた方が良い。文章を読みな
がらじゃプレイに集中できな
いし、コマンド選択のために
ゲームが一時停止してはテン
ポがそがれるからである。現
実的に考えてみると、敵や状
況はコマンド入力まで待って
くれたりしないもんね…。
 今の時代では当たり前の演
出となったビジュアルシーン
なんかも、挿入箇所をよく見
極めないとせっかく盛り上が
ったテンションに水を注しか
ねない。キャラの心情や世界
イメージをプレイ中に表現す
るのって気を遣うよなあ。


 ところが、この『東海道』はそんな心
配は皆無。キャラの動きや状況を見てい
るだけで、その気持ちや情景がひしひし
と伝わってくるもの。やられパターンひ
とつにしても「うっわ〜、痛そう」って
感じが見て取れるし。
 ゲーム中の文字情報はスコア・アイテ
ム数・残機くらいで、他は全て「絵」。
なのに、その絵を見ているだけで全てが
理解できてしまう。これはゼスチャー表
現やパントマイムに代表される、無声芸
術に通ずるものがあるまいか?

おにぎりを取れば、必殺・地獄車の術!
どんな敵でも薙ぎ倒せるけれど、目が回る…。


 キャラの動きや情景だけで状況をプレイヤーに伝
える――後年の作品では『メタルスラッグ』シリー
ズが思い当たる所。あの地獄レベルの描き込みによ
って、命を吹き込まれたキャラ達が大暴れする様は
本当に痛快! 台詞やナレーションなんか無くたっ
て、誰がどんな気持ちなのかがバッチリ伝わってく
るもの(原画家さんやドッターさん、胃潰瘍にはお
気を付け下さいな)。


カン太郎「あらよ!」  ゴロ太「待ちやがれ〜!」
剛左衛門「覚悟せい!」  お石「ひひひひひひ…」
 しかしそれより十何年も前に、『東
海道』はそれをやってのけていた! 
それも、ネオ・ジオより遥かにスペッ
クの劣るFCにおいてである。
 そりゃそんなにメチャクチャ細かく
キャラパターンがあるわけじゃないけ
れど、それでもキャラ達の言わんとし
ていることは充分に伝わってきた。ま
るで、台詞無しの人形劇でも観ている
かの様に…。このゲームのキャラにや
たら愛着があるのはそのせいかも知れ
ないな〜。文字や言葉でなく、行動で
示すのが最も心に響くってか…。











心に大きな大輪花を!!

 この『東海道』、プレイしていて素直に
「楽しい」と思えるゲームである。テクニ
ックはそれなりに要されるけれど、噛めば
噛む程に味の出る良好難度だし。格ゲーな
んかで疲れた時の息抜きにうってつけなん
じゃないかな〜。東海道五十三次の旅路を
忠実に再現したステージ構成もなかなか魅
せられるし。そのタイトルは伊達じゃない
ってね…。
「見せる」ことで大いに「魅せて」くれる
本作、是非その目と心をもってして体感し
てみて欲しい。最終ゴールで上がるカン太
郎花火とEDメッセージ、シンプルながら
もジンとくるから!

お見事、街道走破! ジャンプで万歳三唱^^
ももこの待つお江戸まで、コツコツ爆走してゆこう!

(C)SUN SOFT 1986

MEMORIAL GAMESに戻る