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   一緒に燃える 火の鳥だ

題目:テラクレスタ
                         
■メーカー:日本物産
■メディア:アーケード
■ジャンル:シューティング
■発売年 :1985年




 同社のヒット作『ムーンクレスタ』の一応の続編。前が「ムーン(月)」だから、これは「テラ
(地球)」にしたのかな〜。じゃあ今からでも第3弾『サン(太陽)クレスタ』と言うのを…。











分家、そして発展

 前作『ムーンクレスタ』は、インベーダーブ
ームにあやかって作られた固定画面STGであ
った。その次作にあたる『テラクレスタ』は、
『ゼビウス』による縦スクロールSTGブーム
に乗って誕生したという経緯がある。二代に渡
って二番煎じ、と言ってしまえば聞こえは悪い
が、いずれも本家との差別化に成功して大ヒッ
トを成し得ている。きっかけが真似でも、まん
ま流用でなくアレンジや追加要素によってゲー
ム性の昇華に成功したという好例と言えよう。
 それぞれがオリジナル要素を考案するのはも
ちろんとして、こういう良い姿勢での他作応用
には好感が持てるなあ。最近のクリエイターに
も、こうした「我道」「先達への敬意」の両立
を求めたいものである。

ニチブツの出世作『ムーンクレスタ』。
ゲーム性・演出ともに今でも魅せてくれる☆



そして『テラクレスタ』。美しいグラフィックは、
今のゲームと比べても遜色無いなあ。
 システムは、オーソドックスな縦スクロー
ルSTG。『ゼビウス』の頃から今現在に至
るまで、非常に王道的な仕様である。そして
前年にテーカン(現テクモ)から出た『スタ
ーフォース』と同様、ひとつのショットで空
中物と地上物両対応という簡素な作りとなっ
ている。STGはアクションと同様、一瞬一
秒が生死を分けるジャンルだけに、遊び方が
簡単であることは必定と言えよう。アレコレ
考えている間に死んじゃう様なややこしいシ
ステムじゃ、楽しみどころかストレス要因に
なるもんなあ。狂気染みた弾幕も然り。
 この当時は本当に、マニア対象でなく全て
のユーザーがこなせることを念頭に置いて作
っていたのよ、メーカーは…。


 もちろん、それだけではよその同系ジャンルと変わらない。故に、『ムーンクレスタ』同様に独自の
エッセンスを加味したわけである。それによって『テラクレスタ』は、他作品と一線も二線も画すほど
の大人気作として記憶に刻まれることとなった。その辺りを詳しく検証していきたいと思う。











5つの心がひとつになれば

前作『ムーンクレスタ』の最大の見所は、プレイヤー機の「合体」であった。


 3機に分かれたロケットが、ボーナスステージを舞台にドッキング! こ
れにより、自機の砲門が増えたりなどのパワーアップが図れる。こうしたシ
ステムがヒットの要因となったわけである。その点を『テラクレスタ』は受
け継ぎつつ、後継作らしく更なる飛躍を遂げている。

超緊張のドッキングシーン。対戦格闘の
駆け引きすら比較にならないヒリヒリ感が…。


 プレイヤー機は、全5機合体の巨大戦闘機ウイ
ングギャリバー。機数や全機合体のデザインから
して元ネタが知れるが、ともあれプレイヤーがメ
インで操るのはコアとなる一号機。無論、この状
態だとショットも何もかも弱く、仇敵マンドラー
軍団に太刀打ちなど到底出来たものではない。
よって、地上の格納庫に捕らわれた友軍機を救
出。それらとの合体によりパワーアップを図る
こととなる。そのパワーアップに工夫を凝らし
たのがニチブツの偉い所である。


 全5機のパーツから成るウイングギャリバーは、それぞれの機体に明確な個性がある。
1号機は単なる前方へのショットだが、それ以外の機体とのコラボは以下の通り。


2号機合体
ツイン砲搭載

3号機合体
後方ショットの追加

4号機合体
前方への貫通弾

5号機合体
後方にバリア




やや攻撃範囲拡大。てゆーか、せめて
そんくらいなきゃ突き進めません。
敵も画面中をグルグル飛び回るので、
けっこう有効な部類の武装かも。
ボス系にかなり有効! でも、1+4号機
だけだと、その貫通弾のみの発射に…。
あまり使い出はないが、当てさえすれば
この巨大戦艦ダイコン(…)も瞬殺!


 かように、合体する号機によって様々な効果が
得られる仕様となっている。もちろんこれらは併
用が可能で、パーツが揃う程に自機は多彩な攻撃
力を有してゆくこととなる。これはやっていてか
なり気持ちがいい。圧倒的となった戦力で敵を一
方的に捻じ伏せるのはやはり痛快であるし、何よ
りひとつずつパーツを揃えて完成に近付いてゆく
経過がねえ。メカ好き魂をいかんなく燃え立たせ
てくれるのよ、本当。この頃のニチブツのゲーム
って、やたらこの手のメカやロボットものが多い
んだよねえ。社員や企画者にたまたまそうした漢
が大勢いらっしゃったのかしら…。


 そして本作の目玉その1。全5機の合体が
完了すると、機体は紅蓮の炎に包まれて火の
鳥に! 以後16秒間程無敵状態となり、触れ
るだけで敵を蹴散らすことができる。ここま
で堂々とパクっていると突っ込む気も失せる
が、ともあれこの「火の鳥」状態は素直にカ
ッコイイ! 「無敵」という二文字が本当に
映えるんだよね〜、オリジン同様に☆
 ボスキャラの直前で5機合体を完成させ、
無敵状態でボス戦に…といった戦術も駆使で
きるし(要パターン覚え)、使い方次第で実
用的にも活きてくる。何においても、その特
性を単なる観賞で済ますか、意義を存分に活
かすかは使う者次第ということか…。

雄々しく燃え盛る火の鳥。何というか、実に
「説得力」を漂わせる無敵ではあるまいか?


 逆に、そうして戦力が増強される反面、パーツ
が増えるごとに自機は当たり判定が大きくなって
ゆく。合体すれば体積は増えるんだから、これは
物理法則に適ったハンデと言えよう。
 しかし、最低一機でも合体していれば、攻撃を
受けてもそのパーツが破壊されるだけでコアであ
る1号機は無事で済む。よって、保険の意味でも
合体には重要な意義があるというわけ。このシス
テムは、同社がこれ以前に出した合体ロボット系
STG『マグマックス』も同じ。後の『魔界村』
の鎧システムも、始祖を辿ればここに繋がるのか
も知れない?


 そして本作の目玉その2。「合体」なら他のメカ系ゲームでも珍しくないが、本作はそこから
もう一歩飛躍することに成功している。集まったパーツが分離して、フォーメーションを組んで
連携攻撃をするというものである。こちらはパーツの種類でなく、その時点での機体数によって
攻撃法が決定される。

1・2・3号機で逆三角フォーメーション。
恐らく最も機能的であろう陣形。

 2機編成…
横並びで、三日月状のワイドビーム発射。

 3機編成…
逆三角並びで、扇状にショット。

 4機編成…
ひし形並びで、正面射撃及びクルクル弾発射。

 5機編成…
ホームベース状に並び、画面中に万遍なくショット。


 以上の様に多彩な攻撃バリエー
ションが存在し、状況と使い方に
よってかなり戦局を左右してくれ
る。シンプルな割に、なかなかど
うして戦略性の濃いゲームだわ、
つくづく。
 分離の瞬間は無敵、分離中は1
号機以外は当たり判定が無い(つ
まり判定を縮小できる)等の措置
もあり、緊急回避の手段としても
活用可能。今で言う所のボンバー
みたいな印象も受けるが、こちら
は飽くまでもゲームを楽しむ、遊
びの枠を拡げるための要素。昨今
のバカみたいな弾幕シューの「焼
け石に水」的な一時凌ぎアイテム
とは違うことを明言しておく。

2号機を欠いた状態で、4機複合攻撃!
強大な敵には戦略と協力で立ち向かえ!
 尚、フォーメーション回数は3
回までストックでき、新たなパー
ツを回収するたびにフルチャージ
される。全機合体後にフォーメー
ションを使い切ってしまったら、
敢えて被弾してパーツを少し失く
す。そして改めてパーツを回収し
直してフォーメーション回数も補
充…といった戦術も必要とされて
くる。「戦力」「保険」「フォー
メーション」と、パーツの回収・
破棄には様々な意義が込められて
いるわけである。まさに「単純だ
が奥が深い」と称するに相応しい
よなあ、『テラクレスタ』。こう
した「アイディア」こそが名作足
り得る所以だよ、うん。


 それにしても、この頃のニチブツはやたらめった
らメカ系のゲームを出していた。本作はもちろん、
『マグマックス』『UFOロボ ダンガー』といっ
たロボットもの、『セクターゾーン』みたいな近未
来的レースものなど。どう見たって70〜80年代のメ
カ系アニメの影響受けまくりだよな〜。上でも書い
たけれど、当時のニチブツはそれ系マニアの溜まり
場的メーカーだったのだろうか。つくづく、素晴ら
しい時代があったものである。『スーパーロボット
大戦』に『バーチャロン』が起用されたくらいだか
ら、ニチブツ系メカだって復古してもいいんじゃな
いかと思うんだけれどな〜。











至高の開幕マーチ

 本作発売当時はまだ筆者も小学生。ゲーセンへの立ち入り不可はもちろん、アーケードゲームを遊
ぶ小遣いすら無かった頃である。故に、業務用をプレイできたのは残念ながらかなり後年となった。
 代わってやり込んだのが、翌年発売されたファミコン版。無論、友達から借りてのことであった。


 グラフィックやサウンドは流石に
見劣りするものの、ゲーム性そのも
のは業務用をかなり忠実に再現。後
にようやくプレイできた業務用と比
べてもそう遜色ない移植度であった
と思う。当時のSTGらしい遊び易
さも手伝って、かなりのめり込んだ
ことを記憶している。今でもしょっ
ちゅう引っ張り出してプレイしてい
るしな〜。ライトユーザーにとって
は、昨今の狂った弾幕ゲーなんかよ
りこれくらいの方がやり易いのよ。
もちろん、合体メカとかが好きとい
うのも大きかったけれど。

これは1・4・5号機での合体形態。
どんな組み合わせでも絵になるから不思議^^



諸悪の根源・宇宙魔王マンドラーとの決戦。
こちらも全機合体の総力戦で臨め!
 そしてそのゲーム性もさることながら、個人的に
非常に惹かれたのが音楽! とにかくBGMがいい
んだよねえ。
 FCのハード性能では業務用のを再現し切れない
から、音質なんかはそれに沿ったものに変えられる
こととなる。そのFC風のサウンドがむしろカッコ
イイ! やたらカン高いジャンジャンした音源が、
業務用以上にヒーロー願望を刺激してくれるのよ、
本当。何となくだが、70〜80年代のヒーロー・ロボ
ット番組の歌を思わせるノリが感じられるんだよね
え。今の小学生に業務用とFC版のを同時に聴かせ
たとしても、多分FC版の方がカッコイイって言う
と思う。ハードが業務用→FCと移行した結果では
あるが、あえて質を落とした方がいい結果を産む場
合もあるという好例ではあるまいか?


 更に、その真骨頂と言いたいのが、オープニ
ングタイトルのサウンド! 元々は業務用のハ
イスコアネームの際のBGMであったが、移植
にあたってOPに据えられたものである。
 音質の変化に加え若干のアレンジもなされて
いるのだが、これがとにかく素晴らしい仕上が
り! 聴いているだけで心が高揚し、勇気が湧
いてくる感じがするんだよねえ。だから、ゲー
ムプレイ前には必ずタイトルのBGMを1コー
ラス聴くことにしている。「いざ、行かん!」
という意気込みがムクムク湧いてくるから♪
 いやもう、本当に名曲である。学校の文化祭
とかで、ブラスバンド部に演奏させたら拍手喝
采間違い無し?

FC版のタイトル画面。業務用よりは見劣りするが、
バックを飾るシンフォニーは歴史的名曲…。











不死鳥の如く…


タイトル画面にて。今まさに羽ばたかんとする
火の鳥に、熱き闘志が燃え盛り…。
 時流に乗りつつも、単なる模倣でなく我流の
スパイスの投与によって独自性を産み出してき
たニチブツ。この『テラクレスタ』はまさにそ
の代表例と言えよう。演出的なものがうまくゲ
ームシステムとして反映されているから、違和
感が無いのはもちろんのこと、逆に思い入れ要
素としてゲームの大きな「惹き」ポイントとも
なっている。無論、メカ系がよっぽど好きじゃ
なければこういう企画及び発想も浮かぶまい。
いい人材と環境が揃っていたもんだよなあ。
 現在じゃ脱マー業界の老舗にして大御所とし
て君臨しているけれど、久し振りに本作の時代
のノリで硬派なメカゲーに着手してもらいたい
もの…。


 PCエンジンやサターンでリメイク版も出たものの、やはりオリジナルを超えるには至らなかった模様。
それだけ、第一作の時点での完成度の高さが伺えるものと言えよう。5機合体時の火の鳥が象徴する様に、
『テラクレスタ』の栄光の軌跡はいつまでも燦然と輝き続ける…。


(C)NIHON BUSSAN 1985

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      おまけ(文字通り)

 筆者もかなり後年になって知ったのだが、FC版発売当時に本作を題材としたおもちゃがい
くつか出ていたそうである。合体メカものということでネタにし易かったのは解るが、ゲーム
と他メディアとのコラボ自体が当時としては画期的だったのではないだろうか。『ドラクエ』
『スーマリ』級
ならいざ知らず、『テラクレスタ』とはまさに慧眼だったね、メーカーさん!


「Wダブル変形合体」と
銘打たれたキット。

裏には解説が。戦闘機は
当然として、ロボット!?

で、ロボ形態。玩具オリジナル
だけれど、いいじゃん、コレ!



更には食玩も。全機揃うまでに、
何個ダブることやら…。


 現存数は相当少ないと思うが、入手の機会があれば是非手にしたいレア
ものだよな〜。つか、一時期ガシャポンで流行っていたゲームの戦闘機シ
リーズででも出ないかしら、ウイングギャリバー。1〜5機別個で、もち
ろん合体式。各機の付属パーツを集めれば火の鳥とか…。

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