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   昨日の友は今日から敵

題目:スパイvsスパイ
                     
■メーカー:ケムコ
■メディア:FC
■ジャンル:アクション
■発売年 :1986年



「vs」は「バーサス」でなく「アンド」と読む。「強敵」と書いて「とも」、「宇宙」と書いて「そら」、
「地底怪獣」と書いて「バラゴン」、「実験動物」と書いて「モルモット」…。











殺りあう舞台はメディアを越えて

 元となる作品は、アメコミの同名
作。米国はマッドマガジン誌におい
て、1961年の誕生以来永きに渡って
愛読されている大人気コミックであ
る。
 白スパイのヘッケル&黒スパイの
ジャッケル(実は双方カラス)が、
あの手この手でやり合う様が抱腹絶
倒! ブラックジョークをふんだん
に含んだ描写は、往年のドリフのコ
ントを彷彿させる^^ 意表を突いた
展開ってのは本当、本能を直接刺激
してくれるよな〜。

ヘッケルvsジャッケル。永きに渡る戦いは、
年代・世代を超えて更に続いてゆく…。


 投稿動画サイト『You Tube』で検索すれば、アニメを数多く視聴できるので是非一見を。現在では
CGアニメまで制作されているから、名作は時代を超越するというのを思い知らされるなあ。



ほっかむりに風呂敷包みの泥棒しかり、
こんな解り易い格好のスパイって実在するの!?
 そのライバル同士の対決をゲーム化したの
が、本作『スパイvsスパイ』。
 諜報活動そっちのけでドタバタやっている
原作と違い、それなりに真面目にスパイ活動
を行うのであるが…これがもう、やっぱりド
タバタ^^ ゲームの世界ではお馴染みの「忍
ばぬ忍者」と同じで、スパイのくせにメチャ
クチャ大胆に、堂々と駆けずり回るんだよね
え。もう痕跡残しまくりって感じ。
 コイツら絶対に「自称」スパイであって、
どっかの組織に属しているとかじゃないんだ
ろうなあ。普通に見ても、玄関の防犯カメラ
の時点で即お縄だろうし…。


 そんな彼らの標的は、ゲーム業界の大御所「ジ
ンテンドウ」が新開発した『ディスクシステム』
の機密書類。ヘッケルは「ケムコ」、ジャッケル
は「トムコ」の産業スパイとして、ターゲットを
巡って対決することとなる。
 ネタといい企業名といい、当時は大らかだった
もんだよな〜。パロディに寛容な時代ってのは、
良い作品が沢山産出されていたものである。


 今やるとしたら「新マシン『Uii』の機密書類」ってとこだろうけれど、即クレームがつくわな、きっと…。











よその会社でやりたい放題

 ゲームのルールをざっと説明すると、「相手を出し抜きつつ、目的のアイテムを全て揃えて脱出」てところ。
この「相手を出し抜きつつ」が本作最大のポイントである。



全アイテム、及びそれらを収納したトランクを所持。
あとは敵に奪われない様にトンズラこくのみ…。
 機密書類の奪取が目的と上で書いたが、正確には収集
するべきアイテムは以下4つ。

     ・書類  ・ドル袋
     ・鍵   ・パスポート

 書類他、いかにもなアイテムが揃い踏みであるが、と
もあれ以上4点を入手することが2人のスパイの任務と
なる。ただ、これらアイテムは同時に2つ以上所持する
ことができないので、これらを収納するためのアイテム
「トランク」も見付けなければならない。入れ物くらい
持参してきてよさそうなものだが、そんな些細なことに
突っ込んでいてはレトロゲーマーは名乗れまいて…。


 だがしかし! アイテムは各1個しか存在せず、その入手を巡ってヘッケルとジャッケルとで争奪戦を繰り広
げることとなる。時に激しく、時に狡猾に――。その様と言ったら、もう血で血を洗う戦いなのよ、本当…。


 スパイものらしく、彼らも様々な妨害アイテムを所持している。どれもこれもトリッキーなもの
ばかりで、その扱い方が勝負を分けると言っても過言ではない。「罠」という妨害工作の時点で、
正々堂々の「勝負」とは言い難いけれどね…。

ヘッケルは爆弾、ジャッケルは時限爆弾を準備。
この駆け引き…もとい謀略が勝敗を決す。

お見事、ジャッケルにバケツ浴びせ成功!
教室入口の黒板消し落としのノリで^^


ちなみに、罠についての詳細はこんなところ。
罠の種類 仕掛ける場所 効果 解除方法
爆弾 家具類 触れた瞬間に爆死 バケツ
スプリング 家具類 壁までとばされて死 ペンチ
硫酸バケツ ドア 感電死
時限爆弾 部屋自体 入室2秒後に爆死 爆発までに退室


 ターゲット入手のために部屋中
を駆け巡り、家具を片っ端から調
べなければならないのだが、迂闊
に行動しようものなら罠が作動し
てドカンとなる。この駆け引きを
制した者に軍配が上がると言えよ
う。
 尚、仕掛けた罠は自分自身にも
判定があるので、やたらめったら
設置しまくると墓穴を掘る場合も
…。一流のスパイには、機転と冷
静さ、そして記憶力が要されるの
であった。

マップを開けば、アイテムや罠も一目瞭然!
青がアイテム、黄が罠。活用せよ!


 尚、スパイ同士が同じ部屋で出会うと格闘戦に突入する。通常は素手での殴り合いだが、
事前に武器を入手しておくと戦力がダンチなので忘るるべからず。リーチで勝る警棒か、威
力で凌ぐナイフかはお好みで(相手より先に両方を押さえておくのが利口)。



バッタリ会ったら戦闘開始! 今はお互い素手で、
条件は五分五分。死合を制するのは…。
 他、この対決シーンでは、A+Bで
相手を跳び越すことができる。武器を
持った相手なんかとは正面切ってやり
合わず、ジャンプでトンズラこいて罠
で足留めなんて戦法も…。何も、真っ
向からぶつかるばかりが能じゃないも
んね。
 いや、これは決して卑怯な戦法じゃ
ないよ。「三十六計逃げるにしかず」
という格言に沿った、れっきとした兵
法と言える。そもそも、目的は「相手
の打倒」でなく「アイテムの奪取」な
んだから、本末転倒になってはいけな
い?











本音の垣間見える時

 本作は、基本二人同時プレイ。CPUもしくは人間の操作する2Pとの戦いとなる。


 そもそも、2人同時プレイというものは、大きくふた通りに分けられる。ひとつは共闘して
目的達成を目指す「協力」、もうひとつは目的を巡ってプレイヤー同士が凌ぎを削る「対決」
である。本作は見た通り後者であるが、そこが一筋縄でいかないのが醍醐味なわけである。

ジャッケル、バケツを準備! 様子は筒抜けだが、
つい忘れて引っ掛かっちゃうのが常^^

殴り合いを制したのはヘッケル!
殺られたジャッケルはペナルティでしばらく休み…。


 一口に「対決」と言っても、様式はいろいろ。
 スポーツ系や対戦格闘の様に、プレイヤー同士
が正面からぶつかり合うがまずひとつ。同じ競技
や題材でスコア等の成績を競うのもまたひとつ。
形は異なれど、いずれも正々堂々の真っ向勝負と
言えよう。紳士的と言えば紳士的かなあ。
 しかし、この『スパイvsスパイ』はその対象で
はない。何て言うか、基本テーマは「足の引っ張
り合い」なんだよねえ。「謀略」「裏工作」こそ
が本筋と言うか…。


 求むる品はお互い同じで、しか
も2つと無い。その希少アイテム
を巡って、罠を張る! 殴り合う
! 裏をかく! とにかく、相手
を「ハメる」「陥れる」のが本作
の趣旨と言える。
 罠にかかって死んだ相手をほく
そ笑み、直後に自らも罠を引き当
てて煮え湯をあおり――本当にこ
んなことの応酬なのである。首尾
良くアイテムを全回収しても、罠
にかかって足止めを喰らっている
間にかっさらわれたりなど…。ま

アイテムが揃い、あとは脱出するのみ。
だが、ジャッケルもすぐそばに迫り来る。急げ!
さに「謀略を制すものが本作を制
す」って感じである。その謀略だ
って、うっかり自ら掘った落とし
穴にハマる場合もあるし…。この
場合は「明日は我が身」ってか。
つくづく、ことわざ表現が映える
ゲームだよな〜。
 CPU相手だったらまあいい。
コンピュータの割に大して賢くな
いし、ヤバくなったら即リセット
という王道(邪道)パターンでこ
なせるから。しかし問題は、本作
の真打ちたる「対人対戦」の方。


 プレイヤーは、双方ともに生の人間。その人間
同士が、ゲームの中とは言えお互いをハメ合い、
アイテムを奪い合うのである。これがかなりダー
クな空気を噴出させてくれる。
 バケツで感電させ、凶器で殴り合い、アイテム
を強奪…。お互い、横でやっている友達に憎悪が
もたげること請け合いである^^ 下手すりゃ、ゲ
ームの中だけと割り切れずに尾を引く例も…。い
や、筆者は違うけれど、そういうケースもあった
らしいのよねえ。本作が通称「友情決裂ゲーム」
と呼ばれる所以がここにある。ケムコも人が悪い
よな〜、人の心の「闇」をこれだけ引き出すシス
テムを作り出したんだもん…。

今度はジャッケルがしてやったり!
死せるヘッケル、暫しの昇天…。



何気に行動していて、突然の衝撃降臨!
平凡な日常への一喝がイタズラの本道なのだ。
 いやしかし、このプレイヤー
同士の「ハメ合い」がメチャク
チャ面白いのは紛れもない事実
である。要するにこれは「イタ
ズラ」の応酬なのだ。
 誰でも経験があるっしょ? 
友達なんかに軽〜い気持ち(自
分が勝手にそう思っているだけ
だが)でネタを仕掛け、アタフ
タする様を見てほくそ笑んだこ
とが。全くもって悪趣味だが、
それこそが「イタズラ」の趣旨
なんだよねえ。それが原因で友
達を失ったり、ましてや相手を
辛い境遇に追い込む恐れもある
ので、やる前に充分な審査が必
要だけれど(最初っからやらな
きゃいいのだが)。そのネタを
実行した場合にどんな事態が予
測されるか、逆に自分がされた
らどんな気持ちになるか――皆
がその気持ちをちゃんと持って
いれば、イジメなんて所業も無
くなるはずなんだけれどなあ。
そんな人として大切なことを気
付かせてくれるや、本作は…。


 ともあれ、本作の対人対戦の醍醐味は
「イタズラの仕掛け合い」だということ
が判った。ステージクリアそっちのけで
罠を設置し、鉄拳行使でアイテムをぶん
取り――もう、幼少時代の悪ノリを大解
放である^^(大人のずる賢さで)
 冒頭でも書いたけれど、時に爆笑、時
に苦笑いってのはドリフのコントに通ず
るものがあるなあ。もしかしたら、ブラ
ックなノリの根源は原産国のアメリカン
ジョークから来ているのかも知れない?
向こうの表現は、責任に伴う自由体制が
しっかりしているしなあ…。

ジャッケル、モタモタしている間に時間切れ!
目的そっちのけでイタズラにかまけていると…。











割り切りの大切さ


目的達成後は、セスナで早々に脱出!
直後、出し抜かれた方は爆死昇天…。
 かように、ちょっと屈折した
童心を一挙に放出させてくれる
『スパイvsスパイ』。筆者みた
いに、日常を清く正しくひた向
きに生きているタイプの人間に
はうってつけのガス抜きゲーム
である^^
 大人社会のしがらみに疲れた
者同士で集まって、悪ガキだっ
た頃に立ち返って楽しむのが吉
かも? ゲーム中でのやりとり
が原因でリアルファイトになっ
たりしない様、心根は常に「大
人」でありたいものだけれど。

(C)KEMCO 1986

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