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    目指すは万物の頂点か…

題目:新人類
                         
■メーカー:リックスソフト
■メディア:FC
■ジャンル:シューティング
■発売年 :1987年



 ヒトがまだ「野性」を有し、生態系の一部であった時代をモチーフとした一作である。解り易く言うと
『ギャートルズ・ザ・シューティング』ってとこか…。











走れ 緑の大地を蹴って

 ゲームシステムから説明すると、非常にオーソ
ドックスな縦スクロールシューティング。対地・
対空兼用ショットを駆使し、迫り来る敵を迎撃し
ながら突き進むというアレである。『スターフォ
ース』から現在に至るまで、このタイプのSTG
って尽きることが無いよなあ。ぶっちゃけて言え
ばグラフィックが違うだけ…おっと。
 しかし、他の同系ゲームが空を征くのに対し、
本作のプレイヤーのマックス君はその足で地上を
闊歩!(飛行アイテムもあったりするが) メカ
や超人ではないただの人なんだから当然ではある
が、それがゲームシステムに若干の深みを醸し出
しているのだから世の中判らないものである。

太古の時代、大地を独り征くマックス君。
一見のどかだが、裏には厳しい自然の掟が…。



穴ボコだらけの道のりに、画面を埋め尽くす敵…。
飛べる奴はいいよな〜、足場を気にしなくて…。
 地上を進むということは、つまりは地形の
制約を負いながら進むということである。行
く手には、山あり谷あり、険悪なトラップあ
りとデンジャーゾーンがてんこ盛り。ギリギ
リのタイミングでガケを跳び越えたり、川に
浮かぶ島を八艘跳びなんてフューチャーも当
たり前に存在する。しかも、ゲーム進行その
ものが強制スクロールだから、画面の進みと
の兼ね合いで余計に神経を使うこととなる。
「あ〜、画面がスクロールしきる前に、あの
足場が浮かんでこなきゃヤバイ」とか。地に
足を着けて歩くのって、いろんな意味で現実
の重さが圧し掛かることになるのねえ。


 これが他のゲームならばどうであったか? 大
多数のSTGにおいてプレイヤーは飛行し、画面
内を隅々まで気ままに飛び回る。その際、地形は
遥か下方の景色でしかなく、世界を演出するグラ
フィック以外の要素は無い。今まで気付かなかっ
たが、空を飛べるということは「地形的トラップ
を無視できる」ということだったのだ。よくよく
思えば、どんなジャングルも大海原でも、上空を
ヘリで飛んでりゃ全然関係無いもんなあ。「空を
飛ぶ」ということはやはり、人類の永遠のロマン
と言えよう。ヒーローの多くが飛行能力を有すの
は、その憧れの具現化か…。


 ともあれ、本作『新人類』では、プレイヤーは大地
を蹴って進む。それがために「地形」という事象が絡
み、アクションゲームとしてのエッセンスをも有する
こととなった。この部分だけでもけっこうシビアなの
だが、本作はそもそもシューティング。他のゲームと
同様に多数の敵キャラが画面狭しと襲い来るわけであ
る。故に、「敵」「地形」の二重苦によってかなりハ
ードな戦いを強いられることとなる。
 これは手応えと言うより、正直キツイ! 敵は大群
で、更にトラップは陰険と、その双方ともにランクは
ハイレベルなんだもん。この辺のバランスはもっと気
を遣って欲しかったよな〜。陸と空とで一方的に米軍
から攻められるベトナムじゃないんだし…。

こちらは地面をテクテク、あちらはお空を軽快に…。
ワンサイドゲームの極みでない!?











現代STGのご先祖?

 まあ、この頃のFCユーザー向けソフトだけにか、ゲーム自体はそこそこ遊べる作りになってはいる。



左上の肉パネルを取ってライフ回復!
しかし、ちっとも旨そうに見えないのがなあ…。
 基本システムは体力&残機制で、ライフが尽きて
初めて1ミスとなる仕様(穴に落ちたら即死)。当
時のSTGは大抵の場合は一発死システムなので、
これは初心者にとっては有り難くはある。もちろん
回復も可能で、肉やハートを取ればOKと真に解り
易い^^ 体力制であることを利用し、ダメージ直後
の無敵時間を利用して包囲網を突破という戦法をと
ることもしばしば…。
 こうしてよくよく思えば「一度じゃやられない」
というだけで、妙に遊び方に拡がりが生まれるもの
である。対戦格闘につきものの「肉を斬らせて骨を
断つ」戦法も、こうした体力制から派生したものと
言えるかも?(本作が元とは言わないが)


 しかし逆に言うと、体力制でもなければとても
ついていけない難易度なんだよな〜。一面からし
てメチャクチャ熾烈な攻撃で大歓迎されるし。こ
れで一発死制だったら、誰もが開始後10分くらい
でソフトをおもちゃ箱に放り込むぞ、本当。
 体力制なのはいいシステムとしても、それ以前
に無茶な難易度にならない様に注意して作るべき
だと思う。弾幕をかわし切れないことを前提とし
てBOMが存在する昨今のSTGも然り。



 そして戦闘が単調にならない様にとの配慮からか、自機のパワーアップももちろんある。
ゲンコツマークのパネルを取るごとに一段階ずつアップし、最初から数えて四段階までの強
化が可能となる。



最初のボス・プテラノドンにブーメランで対峙!
これくらいなきゃかないません(゜д゜)
一段階…石ころ投げ(前方ショット)
二段階…石オノ投げ(やや大きい弾)
三段階…
ブーメラン(前方に広範囲)
四段階…たいまつ(ホーミング乱れ撃ち)

 ショットが強化されるごとに戦闘は着実に楽になる
し、敵の大群をバシバシ迎え撃つのはなかなか快感♪
むしろ、せめてブーメランくらいまでは上げておかな
いと非常にキツイというのが実状ではあるが。
 それにしても、「大昔の人」のイメージを象徴した
かの様な武器の数々だが、個人的には「弓矢」があっ
てほしかったな〜。


 ただ、せっかくパワーアップを重ねても、1ダメ
ージのたびに一段階ダウンしてしまうのはどうかね
え。先の面ほど難易度は上昇してゆくのに(元々か
なりキツイ上に)、その真っ只中でパワーダウンし
ちゃとても修羅場は乗り切れないっての。2〜3発
喰らったらたちまち初期状態だもん。この点、先
の方の面で死んじゃったら、再び持ち直すのがメ
チャ困難な『グラディウス』シリーズに通ずるも
のがあるかも。つくづく、STGの問題点を浮き
彫りにしてくれる妙作と言えようか…。











経緯はわからん!

 しっかしまあ、今見直しても企画意図の知れないゲームである。ゲームシステム自体は、冒頭で述べた通り
超ポピュラ−な縦スクロールSTG。それは内面的な部分(ゲームとして肝心な部分だが)として、何でまた
「太古の時代」なんだろう?


 STGといえば多くの場合、登場キャラは戦闘機なん
かが定番。昔のハード性能によるグラフィック力では、
描けてもそうした無機質な「メカ」が関の山だったとい
うのが実情であろう。人間などの「生物」を描くとなる
と、どうしても感情や体調といった「生命感」を出さな
きゃならなくなるから。それはアクションゲームの数々
を見れば明らかであろう。
 最近のSTGは『式神の城』『エスプレイド』みたい
に人間がプレイヤーキャラなのが多いけれど、それもハ
ード性能の進歩によって豊かな表現が可能になってこそ
のものだったんだな〜。確かに、ダメージひとつにした
って「無表情のままチカチカ点滅」じゃなく「うっ!」
と怯まなきゃ寂しいし…。

ゲームスタート時。あなたが操るのは、
メカでも飛行機でもなく、この彼なんです!



自分も敵も「機械」でなく「生物」!
見た目が変わるだけで、感覚まで違うもんだなあ。
 そこを本作『新人類』は、全
キャラ「生物」としたわけであ
る。FCのハード性能じゃ大し
て「生命感」は描けないであろ
うに、これは冒険と言えば冒険
かも知れないなあ。
 さすがに敵キャラとかは無表
情だけれど、主人公たるマック
ス君にはわずかながら「感情」
が与えられてある。ダメージの
際の怯みや、面クリ時の勝利ポ
ーズなんかね。これだけでもそ
れなりに気持ちが伝わってくる
し、愛着も湧いてくるというも
のである。現実の社会でも、無
愛想な人より感情表現の豊かな
者の方が周囲に受け入れられ易
いしなあ。
 キャラを活き活きと描くこと
は、そのまま感情移入に繋がる
ということがここから伺える。
後世の格ゲーキャラの大氾濫及
び、2D職人ゲームと謳われる
『メタルスラッグ』シリーズを
思い起こせば、この点は明らか
であろう。何気にいろんなこと
に気付かせてくれるなあ、この
ゲーム。


 それにしたって、ゲームの舞台とし
たのが「太古」なのはどういう経緯だ
ったのかね〜。人類の歴史を振り返っ
てみても、そんなに魅力を感じる時代
とは思えないんだけれど。
「ゲームシステム」というマネキンに
装飾を施すなら、「戦時中」や「戦国
時代」をチョイスした方がウケは良か
ったはず。その辺は、同じ人間キャラ
STGである『戦場の狼』『ガンスモ
ーク』あたりを見れば一目瞭然であろ
う。人型のキャラがショットを放つな
ら、兵士やガンマンだったら素直にカ

見たところ、人類はマックス君ただ一人。
だったら、もう絶滅は確定だ!(子孫作れないし)
ッコイイもの。と言うか、飛び道具を
扱うことがごく自然であるし。
「太古」を舞台にするんだったら、肉
体そのものを駆使するアクションゲー
ムの方がしっくり来ると思うんだけれ
どな〜。その時代を引用することを悪
いとは言わないけれど、古代人が敵を
撃ち落としながら進むSTGか…。一
体誰の発案、と言うか趣味だったんだ
ろう。発案者がかなりの権力者で、か
つ『ギャートルズ』や『フリントスト
ーン』の大ファンだったとか…。











連続突然変異の末…

 自分の知る限り、リコーエレ
メックス(リックスソフト)の
制作したゲームはこの一本きり
である。開発中から何かと宣伝
をデカデカやっていたけれど、
いざ発売されたら期待ほどでも
なかったよな〜。と言うより、
制作中はもっとアクションゲー
ム的だったのに、最終的にはこ
うした縦スクロールのSTGに
収まってしまったんだよねえ。
開発中のゲーム紹介でも、シス
テムやグラフィックが頻繁に変
わっていたことから、再検討や
企画そのものの練り直しが何度
もなされたことが窺い知れる。
元々が見切り発車だったか、完
成直前でたびたび横槍が入った
とかなんだろうか…。
 いずれにしても、発売前から
そんな様を見せ付けられるとユ
ーザーとしては不安にかられて
しょうがなかったぞ。「本当に
大丈夫か? これ…」って。ど
っちかと言うと大丈夫じゃなか
ったのが実状だけれど…。

ラスボス戦。プテラノドン・ティラノ・コブラときて、
最後はハエ!? 悲しませてくれるよなあ(´д`)


 ま、上で検証した通り、ゲームにおける問題点の
数々をいろいろ気付かせてくれるソフトではある。
そしてそれら問題点は、現在のゲーム制作環境にお
いても立派に通用するものである。そういう面にお
いては、ゲーム作りにおける参考や反面教師素材と
して有用と言えるかも知れないなあ(ひど…)。
 そのため、今のクリエイター諸氏にも一度はプ
レイしてもらいたいと思う。「温故知新」と言う
様に、過去作品から参考を得られることも多々あ
るだろうから――。
 まさか、舞台を「太古の時代」としたのは、そ
ういう意味を込めてのことだったりとか!?(死)


(C)RIX SOFT 1987

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おまけ

 ちなみに本作、当時けっこう流行っていた有名人とのタイアップものであった。『中山美穂の
トキメキハイスクール(中山美穂)』『消えたプリンセス(富田靖子)』といった女性アイドル
ものが主流の中、この『新人類』は長州力! 革命戦士と謳われたあの長州である。「サソリ固
め」「リキ・ラリアット」を奮う勇姿には心が奮えた…。


燃える男・長州の若かりし日の姿を見よ! 個人的思い入れもあって、デカデカと掲載させて頂く。


 で、ゲーム中での長州登場シーンだが、所々に隠されているリキマークをゲット
するとプレイヤー自身が変身! 明らかに、長州の雄々しさと古代人の野性的イメ
ージをダブらせてのことだよなあ。『冒険島』の高橋名人でそれをやった時よりは
しっくりくるかも知れないが。

マックス君、長州にメタモルフォーゼ!
8ビットのFCでもなかなかソックリに描けてんじゃん。


 これだけでもインパクトは満点だが、加えて強
烈なのがその攻撃方法。ボタンを連打すると、リ
キ・ラリアットの姿勢のまま分身が跳び出しまく
って敵を殲滅するのである。つまり、長州の形の
巨大なショット攻撃ということで…。
 この発想、一体どこのオツムが閃いたんだろう
かね〜。開発中画面では、プレイヤーとは別に長
州が登場して自動で敵を倒してくれるというもの
だったはず…。と言うか、開発中のそのバージョ
ンの方が絶対に面白そうだったぞ! 現存してい
たらぜひプレイしたいもの…。


奥義、幻影リキ・ラリアット!(即興命名)
タイガー・ジェット・シンにも劣らぬ幻惑攻撃だ!

そのパワーの前には、敵軍も地形もなんのその!
全盛期の長州はまさしく無敵だったよなあ…(郷愁)。

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