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   荒んだ心に、愛情一本♪

題目:ナッツ&ミルク
                     
■メーカー:ハドソン
■メディア:FC
■ジャンル:アクション
■発売年 :1984年



『&』とは言っても、ナッツとミルクは敵(かたき)同士。じゃあ「アンド」じゃなく
「バーサス」と読むべきじゃないかな〜。『スパイvsスパイ』の『vs』とは逆に…。











大人社会のしがらみは…

 最近のゲームって、どれもこれもキツイ! 難度
もそうなんだけれど、イメージなんかもすごく殺伐
としているものばかりだし…。
 格ゲーは拳(こぶし)で語るハードな世界だし、
STGは鉄と油と火薬の匂いがプンプンしまくり。
大型筐体のカードゲームなんかは、その一手が戦局
を左右する緊張感ヒリヒリゾーンだし…。大人にな
った今じゃその毒気に耐えられるけれど、どれもこ
れもこんなんじゃ息が詰まっちゃうんだよな〜。最
近のゲームって、ガス抜き的に遊べるのが全然無い
んだもん。かつては、仕事帰りの気分転換がてらに
できるゲームが多かったものだけれどなあ…。


 そうした疲れに心が苛まれた時、うってつけの癒し系ゲームがある。それが今回のテーマ、
FC黎明期のコミカルアクション『ナッツ&ミルク』。











一応、恋物語だそうで

 実は本作、FC初のサードパーティ参入ソ
フトなのである。少し遅れて発売された同社
の『ロードランナー』が大ヒット作となった
ので、その陰に隠れてちょっとマイナーにな
っちゃったけれど。
 その後何十社というサードパーティが参入
し、1000本を超えるソフトが発売されたFC
市場を思うと、『ナッツ&ミルク』はその偉
大な先駆けではないか! FCの将来を見越
していち早く参入し、最初からオリジナルゲ
ームで躍り込んだハドソンの勇気と英断、ま
さに歴史的な偉業と言えようて…。

ゲームスタート! パッと見にも解りやすい画面。
キャラなんかは、かなり任天堂を意識しているなあ。



フルーツ全回収でヨーグルがお目見え。
あとはナッツの追走をかわし、辿り着くのみ!
 ゲームの方は、固定画面のクリア式アクシ
ョン。恋敵のナッツによって、ヒロインのヨ
ーグルが監禁されてしまった! プレイヤー
は主人公のミルクを操り、ナッツの妨害をか
わしながら画面内のフルーツを回収。それを
お土産にヨーグルの元に辿り着けば面クリア
となる。
 これがなかなかに歯応えのあるアクション
で、非人間型キャラのゲームながら感情移入
度の方も高! ナッツはアホだから、うまく
誘導して池に落っことして自滅させるのが快
感なのよね〜(すぐ復活するけれど)。


 ステージ数は全50面と、ソフトの価格(4500円)に
見合うだけのボリュームを備えている。面の作りも凝
っていて、パズルゲーム的要素も孕んでいて飽きさせ
ない。今やっても全然遜色無い出来である。ステージ
のスキップ機能といった親切設計も備えているし(ど
うせなら『ロードランナー』と同じ「面セレクト」が
良かったなあ)。当時としても、かなりお買い得のソ
フトだったのでは?
 筆者は『ロードランナー』が初購入ソフトだったけ
れど、どっちを選んでも損は無かったってことか…。
こうした堅実な作りが、ハドソンのFC市場における
大臣的地位の礎となったと言っても過言ではない?

凝りに凝った面構成も見所のひとつ。
全体を見渡す広い視野がクリアの秘訣!

こちらはステージエディットモード。
練りに練った面作りで、友達に挑戦しちゃえ!











しかし癒されるなあ

 さて、そのゲーム性もさることながら、本作には非常に大きな魅力がある。何と言うか、全てがとにかく
「丸い」! プレイ全般を通して、「角」というものが全然無いのである。


 まずその世界イメージそのものが、
実にメルヘンチック! 例えて言うな
ら、サンリオワールドみたいなああい
う感覚? 童話かおとぎ話みたいな世
界があって、独特の住人達が独自の生
活を送っているっていうやつ。
 面白いことに、『ナッツ&ミルク』
はそういう童話的な雰囲気を漂わせる
アクションゲームなのである。RPG
やAVGならともかく、アクションで
そういうノリって珍しいんじゃない?
多分、本作だけかと…。

レンガ・土管・鎖・スプリング…。
人工物ばっかなのに、何故か幻想的ムードが…。



今からでもいい! ガシャポンやプライズで、
ぜひ『ナッツ&ミルク』シリーズの制作を!
 そしてその雰囲気通り、キャラ達もとっても
可愛ええ! 自分も敵キャラも、丸に目と足を
付けてそれぞれ色をチェンジしただけのデザイ
ンなのに、そのトコトコ動く様子が愛らしくて
仕方無い。特に、マイキャラのミルクが高い所
から落っこちて失神している様なんて、つい駆
け寄って抱っこしたくなる衝動にかられてしま
うくらい^^
 昔、近所のデパートで「女の子向けです!」
と銘打たれて販売されていたけれど、可愛らし
いものを愛でることに老若男女の差は無いよな
あ。本当に存在してくれないかしら、こういう
ラブリーな生物…。


 何より特筆すべきことに、このゲームってや
っていてイライラが全然つのらないのである。
 ゲームの難度が程良いこと、優れたゲームシ
ステムによってプレイに納得がゆくことは勿論
のこと。その描かれる世界とキャラの愛らしさ
のおかげで、常に心にゆとりと和みを持ってプ
レイできるのである。だから高難度のステージ
でも殺伐とした気持ちにならないし、ミスした
時も「ありゃ〜、残念」って感じでサラリと流
せてしまう。所詮グラフィックが可愛いという
だけの話だけれど、外見の与えるイメージって
けっこう効果絶大よねえ、本作を見ると。

最終面。こんなややこしそうなステージでも、
イライラも胃痛も覚えずに遊べるのはすごい!?


 これがもし『スペランカー』『ボンバーキング』
とかだったらどう? 無闇な難易度に辟易して「ど
うせぇっちゅうんじゃこんなもん!」と絶叫するこ
とがしょっちゅうであろう。ミスしようものなら即
電プチかリセット連打で。気晴らしの筈のTVゲー
ムで、逆にウザさに業を煮やすことってあったんじ
ゃない? けっこうどんなゲームにも言えることだ
けれど。
 それが『ナッツ&ミルク』からは全然感じられな
いから、思えばオドロキである。ストレスと完全無
縁のゲームって、後にも先にも多分これだけなんじ
ゃないかな〜。

ボーナスステージ。難解な迷路に荒れ狂う火球。
猛攻を掻い潜り、助けを待つヨーグルの許へ!

お見事、無事到達! 祝福の花々が咲き乱れ、
愛を奏でるファンファーレが鳴り響く…。











この現代社会にこそ…


最終面クリアの図。ハッピーなミルク&ヨーグル♪
直後、ナッツ達はショックで入水自殺…(本当)。
 冒頭でも書いた通り、今のゲーム
業界って本当に空気が重い!
 格ゲーにおける熾烈な勝ち抜き合
戦、STGのキチガイ染みた弾幕信
奉、資金がいくらあっても足りない
カード系SLG等々…。それぞれが
独自の発展なり変貌を遂げた結果で
はあるけれど、そんなのばっかりじ
ゃいい加減気が滅入ってしまう。事
実、ゲーセンの客層は一極化する一
方だし。もっと落ち着いてサラッと
遊べる、万人向けのゲームが昔は多
かったんだけれどなぁ…。


 そんな息詰まりをゲームや日常に
覚えたあなたに、是非お勧めなのが
『ナッツ&ミルク』! ハードな日
々に疲弊した心に、和やかな風を吹
かせてくれること請け合いである。
何かと頭と神経を使う『どうぶつの
森』とかより、和み度数は上かも知
れないなあ。
 ストレス解消・童心回帰・頭の体
操等、効果は様々! この『ナッツ
&ミルク』こそは、究極の癒し系ゲ
ームと言えよう。
本作の復古によっ
て、是非とも今のゲーム業界・現代
社会に和みと安息を!

通し(スキップ無し)で全50面クリア!
素朴ながら、素っ気無さを感じないナイス祝福♪

(C)HUDSON SOFT 1984

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